2014年1月29日、第14回山陰研究交流会を開催しました。
今回は「山陰地域文学関係資料の公開に関するプロジェクト」(山陰研究プロジェクト1302)を代表して、野本瑠美先生に「手錢家の古筆資料」と題して報告いただきました。

発表者の野本瑠美先生
発表者の野本先生

島根県出雲市大社町の手錢家は、貞享3年(1686)から続く商家で、江戸時代を通じて、醸造業を中心に、松江藩の御用商をも務めつつ幅広い商売を行っていました。歴代の当主は文学への造詣が深く、和歌や俳諧を学び、実作も残しました。

文学の学びと併行するようにして、文学資料の収集も熱心に行われましたが、その中でも、古筆切の収集は注目すべき営みの一つです。

古筆切とは、平安から室町時代の人々によって書かれた古い筆跡のことで、室町時代末期から江戸時代にかけて、茶の湯の流行に伴い、床飾りの掛け物として、古写本から切り取られた断簡が名筆として珍重されるようになったものです。

手錢家には、藤原定家筆とされるものをはじめ、5点の古筆切が伝わっています。それらには、江戸時代から近代にかけての鑑定家による鑑定書(極札や折紙)が付されています。

古筆切は、それ自体は断片ですが、本来一つの写本を構成していた他の古筆切(ツレ)と合わせていくことによって、写本の復元がなされ、それによって研究が進展することが期待しうるため、重要な資料であるといえます。
そのような復元によって、今まで世に知られていたのとは異なる本文が現れる場合もあります。

今回、野本先生の調査によって、手錢家蔵の古筆切の本文の特徴が明らかになって来つつあります。

これらの古筆切の収集が、手錢家の文芸活動とどのように関わっているのかなどの点を含め、今後のさらなる調査研究による成果が期待されます。

交流会の様子
交流会の様子


(文責 田中)