5月9日、山陰研究サロンを開催しました。

お茶やお菓子をお供に、山陰地域に関する情報交換を気楽に行う場として設定し、毎月開催され、すでに17回目の開催になります。

今回は、文化人類学がご専門で、南の島・ヴァヌアツに10年以上通っていらっしゃる福井先生に話題提供をしていただきました。
「ヴァヌアツにケータイがやってきた日」と題してお話いただきました。
事務の方も含め、10名以上の参加がありました。


アネイチュムというヴァヌアツ南端の人口900人の島に、近年、クルーズの一環で訪れるオーストリアからの観光客が急増し、これに対応してケータイ電波棟が立ち、観光客からの現金収入が増え、島が急激に変化している様子が、豊富な写真などをもとに話されました。

特に大きな変化として、伝統的な知識を持つとして尊敬されてきた島の老人たちが、携帯の使用ノウハウについての知識から排除されるというあらたな「老人問題」が発生していること、老人たちの島での『地位』が変化している、という興味深い実態が報告されました。

「観光客の急増」と「ケータイの普及」によって、島の伝統社会が大きく変容し、お年寄りの地位が変化していく様子が、大変興味深く語られ、活発に議論がなされました。

日本のあちこちで見られる地域振興策の中でも、生産性や効率性を重視しすぎる傾向が強まれば、「地域の知恵袋」であるお年寄りの方々の役割や居場所が狭められる事態も起こりうるのではないかなど、現代の日本や中山間地域にとっても大変示唆的な報告でした。

今回のサロンの概要

【第17回山陰研究サロン】
日   時 2012年5月9日(水)17時00分~18時10分
場   所 法文学部棟 山陰研究センター談話室
話題提供者 福井 栄二郎 氏(法文学部)

報告論題 「ヴァヌアツにケータイがやってきた日」

概   要
 私がこれまで調査してきたヴァヌアツの離島に、近年、大きな変化が生じている。電気も通っていないこの島に、携帯電話のアンテナが立ったのである。その背景には、毎月、大型観光船で来島する西洋人観光客の存在がある。
 島に流入したケータイは、島民たちのコミュニケーションを劇的に変えた。だがそれだけではなく、島の知と権力の構造も変化しつつあるのかもしれない。それまで島の権力を掌握していた老人たちが、だんだんと社会のすみっこのほうに追いやられているのだ。
 「観光が与える社会へのインパクト」「高齢者の社会的ポジション」などをキーワードに、山陰地域への展開も視野に入れつつ論じてみたい。